令和8年2月定例会(第7号) 本文 2026-03-09
◯二十番(小木曽史人君)
私からは、歳出第六款農林水産費第一項農業総務費第四目農業改良普及費のうち、有機農業の推進についてお伺いをいたします。
有機農業は、有機農業の推進に関する法律において、化学的に合成された肥料や農薬を使わず、遺伝子組換え技術も利用せず、環境への負荷をできる限り低減する方法で行う農業と定義をされております。
そして、有機農産物として販売するためには、有機JAS認証を取得する必要があり、消費者の信頼を守るために生産者には厳格な管理が求められています。
気候変動対応や生物多様性保全が世界的な課題となる中、農業は食料という人間の命を支える基盤である一方、化学肥料や農薬、化石燃料に多く依存してきた側面もあり、環境への影響が指摘されております。
こうした状況の中で注目されているのが有機農業であり、環境負荷をできるだけ減らしながら、持続可能な形で食料を生産しようという環境保全型農業の取組の一つと理解をしております。
そして近年、国内で有機農業が重要視されるもう一つ大きな理由は、食料安全保障の観点です。
農業生産にかかる光熱動力源の原油や飼肥料は年々高騰しており、今まさに中東情勢がかなり不安定な状況にある中、原油や化学肥料の輸入量が激減した場合、日本の農業に与える負のインパクトは計り知れません。
つまり、省エネルギー、省資源投入を進めていかなければ農業の持続可能性は立ち行かない、まさに食料安全保障の観点から外部資材を必要としない、土づくりを基本とする有機農業を選択肢として広げていくことはリスク分散として避けて通れないとても重要な取組であることを理解する必要があります。
また、ここであえて申し上げますが、消費者理解として有機農産物に対する誤った認識が広がる危険性には注意が必要です。
農水省の消費者調査では、有機食品に対して、安全である、おいしい、健康によいというポジティブなイメージが多く挙げられます。
しかし、有機農業は環境にとって安全な農業であり、食べる人にとって安全かどうかは関係ない。つまり、食品衛生法を遵守していれば、法的には安全は有機農産物に限らず、全ての農産物が備えるべき基本的価値であり、有機農業だから安全というわけではありません。
また、おいしいは個々人の感覚、心の問題で、あるとすれば顔の見える関係性がおいしく感じるにすぎないということ。健康によいも有機食品と一般食品で栄養価は変わらず、健康によいとは言えないというロンドンの研究チームの調査もあると聞いております。
つまり、安全、おいしい、健康によい農産物は、有機農業と慣行農業双方による農産物が私たち消費者にとって同じ価値あるものとして恩恵をもたらしてくれている。有機農業と慣行農業は二項対立の関係ではなく、互いに共存し、補完し合う関係であるという理解が重要だと考えます。
以上の理解を踏まえた上で、有機農業の現状と課題を踏まえつつ質問をしていきます。
国は、持続可能な食料システムへの転換を目指す長期的な方針、みどりの食料システム戦略において、化学農薬や化学肥料の使用量削減と併せて、二〇五〇年までに耕地面積に占める有機農業の割合を二五%と大幅に拡大する野心的な目標を掲げています。愛知県でも、二〇〇八年度に有機農業推進計画を策定、二〇二二年度に一部改正し、さらに二〇二三年度に二〇二五年度までのロードマップを策定して各種施策を進めているものと承知をしております。
先月十七日に東海農政局とあいち有機農業推進ネットワークが主催した令和七年度東海地域有機農業フォーラムが開催され、私も参加をいたしました。
その中で、東海農政局の秋葉局長は、消費者の有機農産物への関心はここ二年ほどで急速に高まっている。ロットがまとまり、流通に載せて市場に出せば必ず売れるが消費者ニーズに追いついていない。農業従事者が減少する中、新規就農者は有機農業志向が強いとおっしゃっていたことが印象的で、大きく変化しつつある有機農業を取り巻く環境について多くの示唆をいただいたと思っております。
担い手の育成については、全国各地で行政や民間団体等による有機農業の現地指導や講習会が実施され、さらには都道府県や市町村、民間団体が主体となって独自の教育機関を設置する動きが広がっており、例えば、群馬県、埼玉県、富山県、島根県では農業大学校に有機農業コースや専攻科を置くなどの動きも広がっているとのこと。
農協でも有機生産部会を立ち上げ、新規就農者の育成、研修制度で情報共有による有機栽培技術を確立させることで、ある程度の質と量を確保した安定的な有機農産物の生産、流通、販売を可能としているところもあるようです。
また、これまでノウハウ中心だった多岐にわたる有機栽培農法の体系化が進み、栽培技術のマニュアル化と併せてネットワークづくりによる技術共有も進み、有機農業に参入しやすい環境が醸成されつつあるともお聞きをしております。
あわせて、有機農業はロボット技術やデータ活用といったスマート農業と親和性が高く、例えば雑草や病害虫駆除、安定した生育環境維持に労力とコストがかかるという課題に対し、自動除草機やAIによる生育診断などによる実証実験も進んでいます。
市町村単位では、地域ぐるみの有機農業の生産から流通、加工、消費まで一貫したオーガニックビレッジの取組が広がり、学校給食における有機農産物の積極的な導入も進んでいるようです。
こうした環境変化があるものの、やはり価格や供給の安定性は大きな課題です。例えば先ほど言った学校給食への有機農産物の導入をとっても、安定した供給先としてのメリット、子供たちへの食育・環境教育につながるといった大変有意義な取組である一方で、安定した量の確保と質の担保、コスト負担の調整など現実的な課題に直面することになります。
供給ボリュームをいかに増やすのかの量の課題に対しては、生産者間の連携の深化や共同販売体制の構築がポイントとなり、市場を広げるという点に関しては、学校給食への有機農産物の積極的な取り入れや地域のブランド戦略に位置づけるなど自治体を巻き込んだ取組も重要になると思います。
るる述べてきたように、地域レベルで様々な取組が進みつつあるものの、担い手の育成、流通体制の整備、技術開発、消費者理解、安定した市場形成など、まだまだ克服すべき課題も多いというのが現状です。
そうした中、有機農業推進関係事業費における今年度事業においては、課題となっている流通の現状把握と実態調査を実施、また、その実態調査を踏まえつつ、県として、二〇三〇年最終目標である有機農業に取り組む面積九百ヘクタール達成に向け、ロードマップを今年度末に改訂すると伺っております。
そこで二点お伺いをいたします。
まず、愛知県における持続可能な農業を実現する上での有機農業の位置づけをどう捉えているのか。また、これまで有機農業の推進にどのように取り組んできたのかお伺いをいたします。
次に、これまでの取組に対する評価と課題を踏まえ、今後どのように取り組んでいくのかお聞かせください。
◯農業水産局長(松井直樹君)
初めに、本県における持続可能な農業の実現に向けた有機農業の位置づけとこれまでの取組についてお答えいたします。
本県では、食と緑の基本計画において、環境と調和のとれた持続的な農林水産業の実現を柱の一つに掲げており、その主要な取組として有機農業の推進を位置づけ、栽培技術の開発と普及、消費者等の理解の促進などに取り組んでまいりました。
具体的には、農業総合試験場が中心となって、水田における除草作業の省力化技術の開発や、有機農業で活用できる資材等の試験研究をはじめ、有機農業の生産性向上に資する栽培技術の開発、普及を図っております。また、県内各地域の農業改良普及課等に四十八名の有機農業指導員を配置し、生産者へのきめ細かい栽培指導を行うとともに、除草ロボットの実証など、現場の課題解決に向けた技術的支援にも努めております。
さらに、有機農業に対する理解の一層の促進を図るため、二〇二四年度からは、生産者、消費者、流通関係者、行政など多様な主体が一堂に会する有機農業のつどいを開催しております。加えて今年度は農業大学校において有機農業者向け公開講座を初めて開催するなど、有機農業に関する情報発信と人材育成にも積極的に取り組んでおります。
次に、今後の取組についてお答えいたします。
有機農業は、環境への負荷を低減する農業として、化学的に合成された肥料や農薬を使用しないことを基本とするため、栽培には高度な知識と技術が求められます。また、生産コストが高くなりやすく、販売面でも課題を抱えております。
こうした状況を踏まえつつ、有機農業を県内に広げ、定着させていくためには、これまでの取組を生かしながら、担い手の育成、定着と販路拡大に重点的に取り組むことが重要であると認識しております。
まず、担い手の育成、定着に向けては、生産者の伴走支援を行う有機農業指導員の新規育成を図っていくほか、県内外の先行事例を調査しながら、農業大学校での有機農業公開講座をより実践的なプログラムとして充実してまいりたいと考えております。あわせて、国の補助事業を活用し、省力化に資するスマート農業機械の導入も支援してまいります。
また、有機農産物の販路拡大に向けては、生産ロットが小さく安定した販路確保が難しいという現状を踏まえ、有機農業のつどいなどのイベントの場を活用しながら、生産者と流通・加工事業者をつなぐマッチングの機会を設けるなど、安定的な販売モデルの実証や優良事例の横展開を推進してまいります。
こうした施策を着実に進め、本県の有機農業のさらなる振興にしっかりと取り組んでまいります。
◯二十番(小木曽史人君)
御答弁ありがとうございました。
では、要望して終わりたいと思います。
愛知県の有機農業の現状を見ると、直近の国の公表データによれば、取組農家件数はここ十年はほぼ横ばいの三百六十一戸。取組面積は徐々に増加傾向の四百六ヘクタールであり、愛知県の全耕地面積に占める有機農業の割合は〇・五六%となっています。
愛知県は農業産出額全国第八位、全国有数の農業県でもあることに鑑みれば、まだまだ取組を加速していく余地はあるのではないかと思います。
答弁にありました担い手の育成と定着、販路の拡大、ぜひしっかり取り組んでいただきたいと思いますが、二〇三〇年最終目標、有機農業に取り組む面積九百ヘクタール達成に向けては、できればロードマップに掲げる各施策項目にも数値的な進捗管理指標──いわゆるKPIですね──を設定してマイルストーンを置きながら、愛知県としてもさらに主体性を発揮しつつ、進みつつある地域レベルでの多様な取組を下支えし、連携を図りながら、県全体で有機農業を育てていく基盤づくりをぜひ進めていただきたいというふうに思います。
また、今年度実施された実態調査の中間報告には、消費者アンケートで有機農産物に対して、安全・安心、健康によい、おいしいといったイメージがやはり根づいているように感じますが、さきに述べたように、有機農業の推進はあくまで気候変動、生物多様性保全といった環境課題、そして食料安全保障に対応するための避けられない社会的要請であるというのが肝です。
特に学校給食への有機農産物の積極的導入に対しては、食育とセットだと考えます。子供たちに対して、分かりやすく正しい理解、安易な安全・安心神話に傾倒しないよう取り組んでいただくことも要望し、質問を終わります。
